2007年11月11日

わたしは幽霊を見た

わたしは幽霊を見た

昭和27年、大高博士をおそったほんものの亡霊
  http://sfkid.seesaa.net/article/65150297.html
について書いたが、折角図書館で借りてきたので、この本について少々紹介しておく。
 
 表紙は上の写真の通り。これはカバーをはいだ状態である。カバーには別の絵が描かれているようである。
 挿絵は堂昌一(著名な挿絵画家)
 少年少女講談社文庫C14。
 1972年11月24日 弟1刷発行
 1973年9月20日 弟6刷発行。
 著者の村松定孝は、泉鏡花の研究者として著名な文学者である。
 だから本書も単なる幽霊の本と見くびるなかれ。結構格調高く書かれているのである。本書を子供時代に読んだ多くの人が大人になってから未だに本書のことを懐かしく思い出すというのも、むべなるかな。

村松定孝 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%91%E6%9D%BE%E5%AE%9A%E5%AD%9D
 
講談社・刊 少年少女講談社文庫【ふくろうの本】全リスト
  http://www.geocities.co.jp/Technopolis/1814/296-.html

 そして本書で紹介されている話は、著者が実際に見聞した出来事が中心になっている。だからタイトルもこのようなタイトルになっているのである。
 以下、本書の内容を紹介する。
 
  
「いまでもゆうれいはいる!」
 巻頭に、新聞に掲載された幽霊に関係ありそうな事件を幾つか紹介。実際に新聞に掲載された記事ということで、信憑性を上げる効果がある。

「生き霊の怪」
 著者が女学校の教師として駆け出しの頃の体験談。これは実体験なのだろうか。それともフィクションなのだろうか。上田秋成や泉鏡花を思わせる短編である。
 
「ガラス窓のゆうれい」
 親友の幽霊を見たのではないかという著者の体験談。
 
「本を読みにくる亡霊」
 山田美妙の息子の旭彦さんの幽霊が父の残した本や原稿を読みに来たという話。
 福田清人が師匠の塩田良平博士宅で聞いたという話である。
 著者の文士人脈が伺える、登場人物が非常に豪華なエピソードである。

山田美妙 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E7%94%B0%E7%BE%8E%E5%A6%99
福田清人 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E7%94%B0%E6%B8%85%E4%BA%BA
 
「月光にうかぶ海軍少尉の霊」
 海軍少尉として出征した次男が戦死した時、家族に会いに来た、という話。
 この海軍少尉の父親は中山先生という。明治時代から少年小説を発表したりフランス文学の翻訳者としても活躍されたということである。ちょっと調べてみたが、誰だか特定できなかった。
 
「下宿屋マチュランのゆうれい」
 著者がフランスに留学した際、フランス到着後の初めての夜に体験した出来事。
 非常に語り口が秀逸で一気に読ませる傑作。文学者たる著者の面目躍如。前のエントリーでリンクした掲示板でも多くの方がこの作品について書いていた。
 
「愛犬の霊を追う未亡人」
 これは本当に愛犬の霊なのだろうか。著者は最後に、実は違うのではないか、という説明をしている。しかし本人にとってはまぎれもなく愛犬の幽霊だ、と。
 調査すれば真偽は明らかになりそうだが、確認しなかったのだろうか。
 
「ゆうれい屋敷のひみつ」
 著者が大分県の中津に住んでいた子ども時代に体験した出来事。幽霊屋敷と言われていた屋敷を探険し、そのことを父親に話す。
 その後著者の一家は、父親の転勤のため東京に引っ越す。引っ越しの際に渡されたお手伝いのおよしばあやの手紙には、恐ろしい事実が記されていた……。
 
 非常にドラマチックな短編。子ども向けの幽霊話だとバカにするなかれ。これはもうサスペンススリラー作品である。
 しかしこれは本当のことだろうか。もし本当のことだとすると、犯罪に近いものがある。もう時効だということだろうか。
 実際に少年時代にこのような事実を知ると、その後の人生に影響を与えそうだ。
 
「死霊が戸をたたく」
 大正9年に「北海タイムス」という新聞で報道され、全国的な話題になったという事件。
 夕張小学校の宿直室でノッキング現象が発生。井上教頭の発案で、ノックの数によって問答を行い、希望通りお経を上げて成仏してもらう。
 この小学校ができる前、この土地は、鉄道工事のための強制労働に使われた囚人たちの収容所であり、その時の犠牲者が三十三回忌に成仏を求めて出てきたのではないか、ということである。
 
「ほんとうのゆうれい問答 今野圓輔 」
 巻末の解説。この今野教授は、民俗学者として怪談の研究をされた方という。
 
 
 以上、本書を簡単に紹介してきた。
 単なる子ども向けの怪談話集だと思えば大間違いで、かなり格調高い文芸的な作品であった。
 取り上げられたエピソードも著者が実際に見聞したこと中心で信憑際があり、また、実在の文士や学者も登場、戦争や強制労働などの歴史についても考えさせられるものとなっている。
 多くの人が未だに本書を思い出すというのも分かる気がする。
 いや〜、昔の児童書は本格的に気合が入っていたんですね。

下宿屋マチュラン1

下宿屋マチュラン2

カシマ
 
 ☆SF Kidの本棚……睡眠開発BOOKS!
   http://www.g-tools.net/17/26612/index.html

   ★ミ ★ミ ★ミ ★ミ ★ミ ★ミ ★ミ

 ☆SFを考え、過去を考え、未来を考える
   20世紀少年少女SFクラブ
   SF KidなWeblog
 ☆睡眠を開発して成功しよう!
   睡眠開発計画
   睡眠開発計画weblog
 ☆相互紹介
   文理アカデミア 総合科学部
   総合科学部 よろづ取扱い科
   人生大逆転!カウントダウンカレンダー
posted by SF Kid at 21:06| Comment(2) | TrackBack(0) | 超常現象 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めまして。
この本、物凄くお気に入りでした。
手放して何十年後にまた入手しました。
作品の舞台は戦前戦中ですがカバー裏表紙
のこの女性は思いっきり1970年代頃の
雰囲気ですね。当時のきもの雑誌を参考に
描かれたのでしょうね。
Posted by pinoko at 2016年10月19日 21:01
コメントありがとうございます。
表紙の女性は1970年代頃の雰囲気ですか。絵に詳しいとそこまで読み取れるものなんですね。
確かに作品の舞台は戦前戦中だったような気が。
著者の村松定孝が若い頃の経験や伝聞した事例が戦前戦中が多かったからでしょうか。
本書が評判良かったため、続編も書かれたようです。
本書を読み返したくなり、続編も読みたくなりました。
Posted by SF Kid at 2016年10月20日 07:27
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/65937436
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック