3月末でジオシティーズが終了になるので、引っ越し作業をしています。
「最近読んだ本より」コーナーに『図画蜂起1955−2000 中村宏画集』の感想文がありました。
「最近読んだ本より」コーナーはHPに置くよりブログの方が向いていると思い、こちらのブログに転載しておきます。
図画蜂起1955‐2000
当HP開設初期の頃、ある方からメールで感想を頂きました。
その方は佐野美津男著『犬の学校』に深い思い入れがあったようです。
また、その本の挿絵を描いた中村宏さんにも思い入れがあったようです。
そんなに印象に残っているとは一体どんな作品や挿絵なんだと検索し、市立図書館に本書があると知り、借りたものです。
『犬の学校』では、不気味で異様な存在感を発揮してストーリーを盛り上げていた中村タッチですが、この本は、表紙から終わりまで、マニアックで濃いエキスを発散しまくっています。
この本の恐ろしさに比べると、『犬の学校』の挿絵などはまだカワイイもんであります。
「戦争・革命・地形・怪奇・顔・お尻・便器・井戸ポンプ・エロス・蒸気機関車・飛行機・立入禁止・セーラー服・望遠鏡・カタストロフィー」
なんていう分類が表紙に掲げられています。
その通り、中村画伯の作品がこれらにカテゴライズされて収録されています。
特にセーラー服に対する執着は大きいようです。
セーラー服を着た不気味な少女(時に一つ目)が繰り返し現れ、蒸気機関車に、飛行機に、戦車に、軍艦に、ケーブルカーにメタモルフォーゼ(変形)しております。
この見立ては面白いものですが、また一方で不気味でもあります。
セーラー服を着た少女、というと、男にとってある種ときめきのようなものを感じてしまいますが、そういったつもりでこの画集を鑑賞するわけにはいきません。
表紙に掲げられた絵などは、セーラー服を着た一つ目の不気味な少女が列車に変身して大勢並んで、セーラー服を着た機関車につながっているという、シュールな光景であります。
中村画伯描くセーラー服少女は、醜悪な老魔女のようでもあり、死体や骸骨と屍姦し、肛門を露出して悪夢の饗宴を繰り広げる存在であります。
パゾリーニの『ソドムの市』のようなグロテスクな世界であります。
それだけではありません。氏が手がけた挿絵の数々。
描いている媒体がまたすごい。
大岡昇平の『レイテ戦記』の雑誌連載当時の挿絵をはじめ、稲垣足穂との共著、渋沢龍彦、夢野久作,倉橋由美子、大江健三郎、花田清輝、埴谷雄高……。「現代詩手帖」の表紙や大学新聞、大学祭のポスターまで手がけています。
氏を子ども向けのSF童話の挿絵画家に登用する、という発想のすごさに驚きます。
実際、『犬の学校』の不気味なストーリーと相乗効果をもたらして、独特の存在感をもった一冊となりました。
いやー、SFとは、新しいものへの挑戦、ですね。
子ども向けだから、マニュアル通りのストーリーで歯ごたえのよい挿絵をつけて適当にお茶を濁しておこう、なんて考えていては成長がありません。
時に難解ながら冒険心あふれる試みで次の世代を育てよう、という試みも大切ではないでしょうか。
今更ながら、『犬の学校』を企画・出版した方々の冒険心を気付かせてくれる一冊でした。2001.09.02(日)
(中村宏さんが挿絵を描いている本)
学園魔女戦争
http://sfclub.sakura.ne.jp/sf15.html
犬の学校
http://sfclub.sakura.ne.jp/kokudosha04.htm
ぼくのまっかな丸木舟
http://sfclub.sakura.ne.jp/kokudosha16.htm
だけどぼくは海を見た
http://sfclub.sakura.ne.jp/kokudosha17.htm
ピカピカのぎろちょん
http://sfclub.sakura.ne.jp/sano01.htm
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